「ことばのデッサン」あらいいづみ エッセイNo.6

2019/12/05 by

2020年もあと1ヶ月。「もうすぐ今年が終わるなんて信じられないですね。」なんていう会話をするようになる季節。日ごとに冬らしい寒さを感じるようになってきました。私の住む群馬県は赤城おろしという強風が吹くことで有名で上毛三山(赤城山、榛名山、妙義山)という山々に囲まれています。

デッサンと聞いて頭の中にその画像がすぐに思い浮かぶ人は美術に関わりの大きい方かもしれませんね。石膏像や静物を観察し形だけでなく構図バランスや陰影などを紙に捉える、一般的には絵を描くことに必要な基本的なこととされています。私自身もそれなりにデッサンの経験はしてきました。

「絵を描くにあたってデッサンが必要かどうか」ということは昔から繰り返し議論されていることのようです。受験には技術的に上手いとされるデッサンは必要かもしれませんが私は絵を描かなない人もデッサンをしたらおもしろいのではないかと思うことがあります。それはモノと周りの空気の関係性を見られるようになることがデッサンのひとつの働きで、私にはそれこそがデッサンの一番の効用のような気がするからです。関係性ということを考えた時、社会生活においてもものごとを俯瞰してみることに役立つような気がしています。

私は今年このデッサンについて考えを改めることがありました。デッサンは単に描くということだけではなさそうだ、ということです。日常生活のなかでものごとについての見解を誰かと共有したり話をしたりすること。自分の感情をことばにしたらどんな表現になるのか考え続けること。それはことばのデッサンだよと教えてもらいました。夏から偶然にもエッセイを書くことになり私にとってことばを紡ぐこともデッサンなのかもしれないと思うとどこか腑に落ちる感覚がありました。描くことと書くこと。どちらも大切にしたいです。 

 

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あらいいづみさんは、2020年2月にピカレスクで100枚のポストカードサイズの新作を発表予定です。次回のエッセイも近日公開予定。ぜひ、それぞれご期待ください!

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・過去エッセイのリンク

No.1「わたしにとって描くということ。」

No.2「作品がもたらす出逢い、ワークショップというかたち

No.3「どうして水彩で描くのだろう

No.4「旅が教えてくれること

No.5「秋、音について考える

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