【連載】作家asamiru日常シリーズ作品紹介Vol.1

2019/06/06 by

今回は、作家asamiruさんの素敵な作品たちを紹介いたします。

asamiruさんは、美大で日本画の勉強をした後、その技法をいかした透明水彩の作品を手掛けていて、鹿児島のどこか懐かしく淡い風景画で知られています。

数十点にも及ぶ今回のシリーズでは、食料品や日用品のような日常に溢れるものや、動植物などの自然的なモチーフが、赤(バーミリオン)と青(ウルトラマリンディープ)の透明水彩による組み合わせと混ざり合いによって、繊細に表現されています。

動脈と静脈のように生き生きとした2色での展開には、表現の画一化などはなく、むしろ技法や濃淡によって、対象をそのまま切り取ったかのような忠実な再現が、一つ一つの作品でなされています。
また、これらのイメージには、家の中や近所から、作家が関心を抱いたものが採用されていて、そこから見える作家の暮らしぶりには、共感を禁じ得ません。

2色の光が生み出す材質を越えた再現性、イメージの無限の広がり、そして、親しみのある日常的なモチーフが特徴である本シリーズの中から、その一部をご紹介いたします。

りんご

本シリーズの代表作である、長野県のりんご「あきばえ」は、深い赤色が特徴。りんご特有の赤さや丸さ、質感は絶妙な水彩の効果によって再現され、斑点模様は小さな星空のような印象をもたらしている。人間の起源と共に語られる禁断の果実は、無限のイメージからなるこのシリーズの始まりを告げる。
▷『りんご』詳細情報はこちら

花瓶

持ち手と注ぎ口のついた水差し型の花瓶。淡い青によるぼかしと細かい粒子は、釉薬の質感を思わせる。表面の濃淡によって、くびれのある立体感が生まれ、クラシックな形状とさわやかな色調は、地中海のような雰囲気を喚起させる。その素朴な風合いは、生ける花の華麗さを十分に際立たせるだろう。
▷『花瓶』詳細情報はこちら

でいご

鹿児島のでいごは、沖縄のものよりも枝に満遍なく花を咲かせる。燃えるように連なる赤い花弁は、青い葉に囲まれていて、日差しが強く風のさわやかな季節を思い起こさせる。右上へと上昇する繊細な枝振りは若々しく、「夢」「活力」という花言葉に見合った生命力を思わせる。

▷『でいご』詳細情報はこちら

 

ソース

大部分が赤で描かれた容器。きつく閉められたガラスの瓶の中には、水彩のにじみによって濃厚さを感じさせるトマトソースがまだらに広がり、食欲をそそる。中身の減ったソースは、日々のちょっとした楽しみとして、食卓に彩りをもたらしているのかもしれない。

▷『ソース』詳細情報はこちら

ドライヤー

淡い青色と地の白色からなるドライヤーは、実用性と造形美を兼ね備えたクールなデザインで、近未来的な印象を与える。機械的な作品は珍しいが、日常に溢れる美的なモノとしてシリーズに溶け込んでいる。人々が共通して抱くイメージながらも、家庭ごとにそのデザインには違いがあるはずなので、そのギャップも見ものである。

▷『ドライヤー』詳細情報はこちら

風船

 

力強い赤ときれいな円からなる風船。余分な筆触を削ぎ落とした平滑でミニマルなモチーフは、シリーズの中でも一際存在感を放ち、宙へと浮かび上がる。一方、風船の結び目の細かい再現には、日常を注意深く眺める作家の観察眼がよく表れている。

▷『風船』詳細情報はこちら

馬の置き物

青色の力強い濃淡によるつつやかな光沢と、赤色の鞍のアクセントが美しい馬の置き物。作家の好む馬というモチーフは、凛々しい顔立ちと、大地を駆けるしなやかな脚によって逞しく表されている。見とれてしまうほどのかっこよさがあるが、部屋を彩る小さなオブジェとしてのかわいらしさも備えている。

▷『馬の置物』詳細情報はこちら

サンドイッチ

 

長方形のパンに薄切りのハムときゅうりを挟んだサンドイッチ。シンプルなランチだが、それだけで満足できるだけの魅力がある。うっすらと赤みを帯びたパンからは、見ただけでその柔らかさが伝わり、その間に見える具にも素材の良さが細かく感じられる。味の想像もつきそうだが、つい手を伸ばしたくなる一品である。

▷『サンドイッチ』詳細情報はこちら

ネコ

 

赤と青の混じり合う、淡い紫色を纏うネコは、足としっぽを丸め、目をしっかりとつぶって眠りについている。優しい色調には、2色の激しい対比にはない穏やかさがある。人に心を許しきったかのようなその姿からは、愛らしさや安らぎが感じられ、観ている側もまどろんでゆく感覚に包まれる。

▷『ネコ』詳細情報はこちら

毛布

 

折り畳み、積み上げられたツートンの毛布は、平穏な日常の一場面を切り取ったかのようである。柄や厚さのばらばらな毛布は、不安定に積まれているが、その配色は赤と青がバランスよく交互に並んでいる。不完全さは、心にゆとりをもたらし、ひと休みする気分にさせてくれる。

▷『毛布』詳細情報はこちら

 

 

以上のように、asamiruさんの眼差しは身の回りにある何気ないモチーフに向けられ、その美しさを赤と青のフィルターを通すことによって、新たな見方を提案しているように思えます。
紹介した作品はごく一部なので、バイカラーが作り出す心地よい世界を、ぜひギャラリーにてお楽しみください。

▷asamiruさん個展「まどろむまでに」開催情報はこちら
https://picaresquejpn.com/asamiru-soloexhibition-madoromumadeni/