marieエッセイ「私にとっての中世」

2020/01/30 by

令和2年になり、もう1ヶ月が過ぎ行きましたね。

私にとって今年は11月にピカレスクで開催される、新作100点を発表する作品展に向け特に制作に集中する1年となりそうです。

皆様にお楽しみいただけるような展示会となるよう、日々制作に励んでおります。

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ところで、皆様には憧れを抱いたり好ましく思う風景はありますか?
誰しも心の中で想いを馳せる景観があるのではないでしょうか。

私は異国の風景というだけで胸が高鳴ってしまうのですが、その中でも中世の気配が色濃く残る景色には特に心惹かれます。

そのため、私の絵に登場する風景も中世の時代のものが多いです。

過去、私が実際に訪れたことのある中で特に好きな景色は、イタリア・トスカーナ地方にあるオルチャ渓谷と、ベルギー・ブルージュの街並みです。

イタリアのオルチャ渓谷は、10代のころにその景色をポストカードで見て以来 私の長年の憧れの場所でした。

視界を埋め尽くすほどの広大な麦畑やブドウ畑、オリーブ畑が連なる緑の丘。そこに糸杉や民家がポツンと佇む光景はまるで絵画のようです。

オルチャ渓谷を車で走らせると、中世の街並みが残る小さな街々が姿を現します。
中でも気に入ったのは、オルチャ渓谷を見渡せる丘の上にたたずむピエンツァという街。

石造りの家々が連なる、端から端まで歩いて10分ほどの小さな街で、街全体がルネッサンスの芸術で詰まっています。


△ピエンツァの街。その美しい風景から「トスカーナの小さな宝石」と呼ばれています。


△オルチャ渓谷。私が訪れたのは8月、麦が収穫された後ではありましたが、どこまでも続く丘陵地帯の風景もまた深く心動かされるものでした。次は鮮やかな麦の緑が一面に広がるであろう春の季節に訪れたいと思っています。

 

私が好きな景色の2つ目は、ベルギー・ブルージュの街並み。

ブルージュは「天井のない美術館」との呼び声高い街です。中世の建物、石畳の道、穏やかな運河…。街を歩いているだけで、遠い昔のお姫様が大切にしていた絵本の世界に入り込んだような心地に浸れます。

私が訪れたのは冬の季節でした。

人気の運河はお休み、そのためか街の賑わいは全体的に控えめな印象でしたが、その分 静寂さに包まれた普段と違う魅力を見せる街を堪能することができました。ブルージュという小さな街には、何度も訪れたくなる魅力が溢れており、私は今なおその虜です。


△冬の冷たい空気の中、運河に群れをなす白鳥たち。


△夜のブルージュの景観。物語の世界に誘われているような、幻想的な街並みです。

イタリアのオルチャ渓谷とベルギー・ブルージュの街並み。
この2つの景色は私の絵によく登場します。

過去に訪れその魅力を全身で感じた場所だからこそ、その感覚を絵で表現したいという気持ちがあると同時に、もしかすると私は絵を描くことを通じて「憧憬の場」を再訪しているのかもしれません。

それぞれの光景を懐かしみ描くことで、私の中に眠っていた様々な記憶が蘇り、私自身が絵の景色の中に佇んでいるような心地になるのです。不思議な感覚かもしれませんが、中世を敬愛する私にとって、この感覚は制作を行う上での大切な原動力でもあると思っています。

 


 

今回ご紹介する新作の背景には、ご紹介したブルージュの街並みを描いています。
主題は黒髪の女の子とオオカミです。

制作過程もお見せしたいと思います。

まずは女の子とオオカミから塗っていきます。

次に背景、ブルージュの街並みを塗ります。

最後に細かな模様を描き完成です。

 

今回は「私にとっての中世」をご紹介させていただきました。
次回は、私の絵に登場する生き物たちについてお話ししたいと思います。
ぜひまたご覧ください。

marie