あらいいづみ エッセイ「どうして水彩で描くのだろう」
ピカレスク参加アーティスト、あらいいづみさんからエッセイが届きました。あらいさんの作品世界と合わせてお楽しみいただけますと幸いです。ぜひご高覧ください。
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・過去エッセイのリンク
あらいいづみエッセイNo.1「わたしにとって描くということ。」
あらいいづみ エッセイNo.2「作品がもたらす出逢い、ワークショップというかたち」
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皆さんは水彩絵の具にどんなイメージをお持ちでしょうか。私は小さな頃使っていたぺんてるの絵の具が馴染み深いです。多くの方には子どもさんが使われる画材というイメージが大きいかもしれませんね。
好きな絵の具のメーカーはいくつかあるのですが、私が現在メインに使っている絵の具はドイツ製の透明水彩絵の具です。絵の具を水で溶いた時の色の広がりが優しくて、粒子が細かくずっと見ていられそうなほどキラキラして……とても美しいです。それをじっと眺めている時間は至福の時間。ぼかしやにじむ様子を見たくて水と絵の具で遊んでいた段階から使えば使うほど、この絵の具の魅力に引きこまれていきました。
水彩で描いておられる方はご存知かもしれませんが、水が乾く前と乾いた後では描いたものの印象が変わります。乾く前の状態は描いている本人だけが見ることができるものなのですね。顔料が紙に定着するまでは時間がかかるのでドライヤーを使うこともあるのですが、私は可能な限り自然に任せて乾燥することにしています。顔料が水の中でゆらゆらしながら自分の行きたい所へ行ってくれるのが一番良いように感じるからです。自分がそう感じるだけで何も変わらないかもしれないのですがとても大切にしていることです。
昨年2月の個展では初めて大きなサイズの絵を描きました。この作品で購入したもののあまり出番がなく失敗だったかな……と思っていた色のシルバーを使ってみました。実際に展示してみてその存在感に驚きました。正面からは殆ど感じられないかたちがちょっとした照明の加減で浮かんでみえます。この時、この絵の具の力を実感したのでした。基本的に3色あればたくさんの色をつくることができますが自分でつくる色と合わせ、さまざまな絵の具を試してみることは楽しみのひとつです。なかなかに奥深い水彩の色の世界。薄めて描いても色の存在をどこまでも感じられるこの絵の具に支えられ私の作品世界は成り立っています。
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あらいいづみさんは、2020年2月にピカレスクで100枚のポストカードサイズの新作をご発表くださる予定です。次回のエッセイも近日公開予定。ぜひ、それぞれご期待ください!
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・過去エッセイのリンク
あらいいづみエッセイNo.1「わたしにとって描くということ。」
あらいいづみ エッセイNo.2「作品がもたらす出逢い、ワークショップというかたち」
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