「秋、音について考える」あらいいづみ エッセイNo.5
ピカレスク参加アーティスト、あらいいづみさんからエッセイが届きました。
あらいさんの作品世界と合わせてお楽しみいただけますと幸いです。ぜひご高覧ください。
秋が深まってきました。太陽が沈むのが早くなり、空気も少しずつ乾いてくる季節。
秋になるといろいろなものの「音」がよく響くのだなぁと気づいたのは今年、夏の終わりと秋の始まりが混ざりあった頃のことでした。私は音楽を聴く事が好きで、なかでもピアノの音が好きです。音楽というよりも「音」が好きなのかもしれません。
ピアノというとクラシックのイメージがあるかもしれませんが、雑食的に何でも聴きます。友だちから教えてもらったり、入ったお店で好きな感じの音楽が流れているとたずねて探したりします。どんな音楽でも自分がいいなぁと思えば聴くのですがピアノの音が入っていると特別耳が大きくなる感じはあります。
幼稚園の頃、買ってもらったアップライトのピアノが家に今もあります。「ピアノを習いたい?」と聴かれ何となく「うん」と答えてから間もなく、立派なピアノが家にやってきました。初めて通ったのはヤマハのピアノ教室。歌ったり踊ったりとても楽しく通っていた記憶があります。幼稚園でオルガンを得意げに弾いていた朧げな記憶も甦ってきました。それから何年も弾かれることもなく忘れられた存在となっていたピアノ。処分すると言われても決断がつかず引っ越し先にも一緒に連れてきてしまいました。
最近、そのピアノを時々開けて弾いてみるようになりました。何か曲を弾く訳ではありません。決まりのない音階をその時の気分でポロンポロン鳴らすととても心地良く、自分が解放されていくような気持ちになります。ただひとつの音を弾き、身体に染みこむように響いていく感覚。絵画を鑑賞する時の感じと同じ感覚であることに気づきました。色々な音が響く秋。皆さまの秋が素敵なものでありますように。
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あらいいづみさんは、2020年2月にピカレスクで100枚のポストカードサイズの新作をご発表くださる予定です。次回のエッセイも近日公開予定。ぜひ、それぞれご期待ください!
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・過去エッセイのリンク
No.2「作品がもたらす出逢い、ワークショップというかたち」
No.3「どうして水彩で描くのだろう」
No.4「旅が教えてくれること」
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