【2021年3月開催】SANGO展

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◆展示概要
「産後 = 珊瑚」

本展は、国際アートマーケットにおいて、女性アーティストが「産後」であることによりその評価が落ちてしまう傾向にあることから立ち上がりました。SANGO展を通じ「産後」 を、「珊瑚」のように、それを身に着ける者の彩りをより深く、輝きを一層強くするものとして再定義することが本展の開催目的の一つです。

本展では、12名の出産経験をお持ちのアーティストに、3点~5点の作品をご出展いただきます。そしてそのうち1点は「産前」に制作された作品となります。産前、産後、それぞれの作品を同時に展示することで、産前から産後にかけ作品の魅力がより一層深まってゆく様子、同時に変わらない本質的な作家性を感じていただければ幸いです。

また、この展示を通じ、アートファンの皆様にお楽しみいただくだけでなく、今まさに出産を控えているアーティストや、初めての子育てに悩んでいるお母様方のお心に寄り添えるような、新しい世界と関わる上でのヒントを見つけるきっかけに繋がるような展示会にもしたいと思っております。

本展は店頭、オンラインそれぞれにて開催いたします。
会場にお越しいただけない方へも、足を運ばずにはいられない方へも、幅広くお楽しみいただけましたら光栄です。出展作品は全て通販可能です。ぜひご高覧下さい。

▷ 企画者の言葉

会期
店頭 2021年3月16日(火)11:00 – 4月18日(日)18:00
オンライン 2021年3月15日(月)20:00 – 4月18日(日)24:00
*作品購入申し込みは店頭・オンライン、どちらも先着順で受け付けます
**通販の場合、作品一覧ページのフォーム経由での申し込みのみ受付(お電話での受付はいたしません)
***店頭での作品購入申し込み受付時点で既にオンラインからの購入申し込みが入っていた場合は、該当作品のご予約者様リストへ追加させていただきます

会場
Picaresque Art Gallery
住所 東京都渋谷区代々木4-54-7(Google Map

◆出展作品一覧(全作品 通販可能)
https://picaresquejpn.com/sango_all_work_2021/

◆参加アーティスト(五十音順・敬称略)

愛川二世 https://twitter.com/aikawanisei/
おかよこ https://www.instagram.com/okayoko14/
カワグチナミ https://twitter.com/nm_ism
木白 牧 https://twitter.com/maki58359547
佐高麻理子 https://www.instagram.com/mariko_sataka/
sheeno https://www.instagram.com/anoimuray/
tomo https://www.instagram.com/tomo.smallvalley/
畑温子 https://www.instagram.com/atsuko_hata/
ピメリコ https://pimeriko.net/
Bølle Girl https://www.instagram.com/bollegirl/
町田雨子 https://twitter.com/machidaameko
Yuko Nasu https://www.imaginaryportrait.com/

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◆企画者の言葉

産後 / 珊瑚

上記のワードが本企画展のコンセプトすべてを体現していると言っても過言ではありません。

イギリスのコマーシャルギャラリースタッフをしていたという、ヨーロッパ人女性と話す機会があった時に聞いてみたことがあります。

「女性アーティストは、出産前と出産後で作風が大きく変わることが多いから、国際アートマーケットでの市場価格が付きにくいというのは本当ですか?」

その女性は「そうね」と答えます。

「それ以前に、美術業界にいる人々の大半が男性であることがほとんどだし、女性アーティストは出産後に作品の質が落ちると言われることもあったり、周りからのサポートを受けられず制作自体辞めてしまう人も多いと思う」

思い切って尋ねてみました。

「あなたは自分自身が出産してから、自身の仕事の質が落ちたと思いますか?」

小学校低学年の息子を持つ彼女はきっぱりとこう言います「仕事のできる時間は減ったけど、質は常に上がり続けている。上げ続けようと努力もしている。それは家族のためではなく、私個人のために、そうしている」と。

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比較的男女平等の意識が高いように感じられるヨーロッパですら、様々な事柄が決して「簡単ではない」のだと知り驚いた出来事でしたが、同時に「女性アーティストは出産後に作品の質が落ちる」と言われている事実にとても納得がいきませんでした。

実際、どれほどの人々がそう思っていたり、あるいは恐ろしいことにそれを口に出して言っているかは分かりませんが、「産後アーティスト」に起こっている状態と、アーティスト自身の作家性には本来何も関係が無いはずです。

同時に、確かに結婚、出産を経て、周囲の環境の変化などの事由によりアーティスト活動を諦めてしまった知人が私個人の周りに全くいないわけではありません。
ですが、彼女が「辞めたくて辞めた」わけではないという事実も知っているがゆえに、それをそのまま見過ごすこともできません。

「産後アーティスト」という特別な存在をしっかりと認識し、正当な評価をすること。

これは、美術業界全体がというよりも、一人一人の鑑賞者の意識の問題なのかもとも思います。

私は、鑑賞者・ギャラリーのお客様とアーティストが美術業界で最も強い存在でいてほしいと願うからこそ、そういった考えになるのかもしれません。

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女性アーティストの「国際アートマーケットでの市場価格が付きにくい」ことについて、投資目的の顧客からすると確かにリスクが大きいのだと思います。

投資目的の顧客の望みをかなえられる美術品が制作され続けていること自体は、決して問題ではないと私は認識しています。

ただ「美術の選択肢」がそこだけになってしまうことは、とても退屈でもったいないと感じざるえません。

通帳のゼロの数を増やすことに人生の喜びを見出す人々へは、その人々に適したアートがあるように。

美味しいお豆腐を食べて「おっ」と思わず顔がほころんだり、ちょっとした贈り物のハンドクリームがすごく手によく馴染んで驚いたり。

そんな日々の小さなことから一喜一喜を積み重ねて生きている人たち、その人生にしっくりと馴染む作品も、とても大切なアートだと私は思うのです。

そして「産後アーティスト」は、投資のためアートが必要な方、日々の暮らを営む力の源を探している方、
それぞれが必要としているアートを生み出すことができる、類まれ無い存在だと私は考えています。

一個人として生きていた世界。

自ら別の命を生み出し現在進行形で育み続けている世界。

その二つの世界を知る「産後アーティスト」は、海の底の景観を彩る存在としてだけでなく、宝石としても私たちの目を楽しませてくれる二面性を持つ「珊瑚」のような存在だと感じました。

本展では、「産後」という要素を、アーティストの価値を下げるものと捉えるのではなく、「珊瑚」のようにそれを身に着ける者の彩りをより深く、輝きを一層強くするものとして捉え、鬼に金棒ならぬ「アーティストに産後」という気持ちで、産後アーティスト様12名にご出展いただく企画展「SANGO展」を、珊瑚の誕生石が3月であることにちなみ、3月より開催することにいたしました。

また、展示作品の中に1点、産前 / 妊娠前に各アーティスト様がご制作された作品も織り交ぜご出展いただきます。
作品を同時に展示することで、産前から産後にかけ作品の魅力がより一層深まってゆく様子、同時に変わらない本質的な作家性を明示する取り組みになれば幸いです。

本企画展は、アートファンの皆様にお楽しみいただくだけでなく、今まさに出産を控えている女性アーティストや、初めての子育てに悩んでいるお母様方のお心に寄り添えるような、新しい世界と関わる上でのヒントを見つけるきっかけに繋がるような展示会にもしたいと思っております。

ぜひご高覧いただけますと幸甚です。
どうぞよろしくお願いいたします。

SANGO展 企画 松岡詩美

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